サイバーボッツ フルメタルマッドネス

対応機種・周辺機器
SATURN 拡張RAM対応
ジャンル
対戦格闘アクション
著作・制作
(c)CAPCOM 1994,1995,1997

 横スクロールのロボット格闘アクションのパワードギアが、対戦格闘になって帰ってきた。ブーストとウェポンボタンを駆使した戦闘は未体験の感覚をプレイヤーに提供。
 ロボットバトルの最高峰が、様々な強化を加え、満を持してアーケードからサターンに登場。

 前作のパワードギアは、カプコンが横スクロールアクションを乱発している時期に出たため、ちょっとしたヒット程度に終わったのだが、世界観やメカデザインにはファンが多く。次回作が望まれていた。
 で、このボッツの登場となるのだが、じつのところゲームシステムが別物になっただけで無く、ロボットのスケールがえらく大きくなったり、キャラクターや世界観が戦記物から熱血物へ変わっているので、一緒なのはメカデザインだけだったりする。

 パワードギアで一度作っていたと言うことや、パーツの使い回しが多いなどの理由もあるだろうが、それにしても物凄い密度のドットのメカがガンガン動き回るのを見るにつけ。
「開発者が三人は過労で死んだな」
と思わせる。動きは豪快でありつつ、薬莢の排出やアクチュエーターの伸縮などの細かい部分が実に丁寧。
 また、硬いはずのロボットの動きにバリアブルメタルというギミックを取り入れることにより、同社のヴァンパイアシリーズに負けないぐらいの奔放な形状変型を行なっているのが面白い。
 拡張RAMを装備すると、特にジャンプA2や待機状態での動きが良くなるので、ゲーム的には大きな差となるものでは無いが、ぜひ拡張RAM装備状態でプレイすることをお勧めする。
 他にも各機体に合わせてゲージのデザインが変わるなど、めちゃめちゃ凝りまくっている。絶対にカプコンに社員には、ロボットに(言葉通り)命をかけている集団が存在する。

 主に上半身と下半身のパーツを挿げ替えることによって、前作の4種類の機体を各2バリエーション追加して計12種の機体という、格闘ゲームの一作目としては異例の量を用意してあり、サターン版ではさらに5機追加されて17機である。
 9人(アーケードは6人)の主人公から一人を選んだ後、搭乗する機体を選ぶシステムになっていて、選択する主人公によってストーリーが変化する(機体の性能は変わらない)。
 このパイロット選択システムは、搭乗者が一定で無いのでロボットの性格付けが曖昧になってしまったこと。またロボットに興味は無くてもキャラクターから入ってきたプレイヤーをとまどわせる結果にもなってしまった。
 逆に、やりこんでくると嬉しいシステムではある。
 コンピュータが使ってくる組み合わせが、そもそものキャラクターの乗機と考えて良いだろうから、その組み合わせを以下に示す。太字は特に乗機として使用していると思われるもの。

ジン・サオトメブロディア/ライアット
マリー・ミヤビレプトス/キラービー/ジャッカル
サンタナ・ローレンスタランテラ/レプトス/ソードマン
ガウェイン・マードックガルディン/サイクロン/ヴァイス
バオ/マオフォーディ/ガルディン/サイクロン
アリエータキラービー/ライトニング/タランテラ/ワーロック
神楽千代丸/鋼鉄山ゲイツ
シェイドヘリオン/ライトニング
デビロット姫とその一行スーパー8

 また、キャラクターデザインの西村氏が暴走してしまったらしく、実にけれんみのある物に仕上がっている。
 人気もなかなかの物で、主人公の一人ジン・サオトメは、同社の「マーヴルVSカプコン」に生身で登場し、零式もといサオトメ流格闘術を披露している。

 音に関して一番特徴的なのは、連続技を決めた時に音声によってカウントが告知されることである。連続技を決めると渋い親父の声で「フォーヒットコンボォ!」などと言う訳である。ついつい高いコンボ数を決めたくなる、2HITあたりを出すと妙に恥ずかしい(笑)
 効果音も金属の打撃音がゴツゴツしたいい音をたてるし、ドリル具合もなんとも素敵だ。最近効果音がマンネリ化しているサンライズは、ぜひ音を買ってアニメで活用してほしいところ。ボッツにはサンライズアニメの音をベースにしたっぽいものも結構あることだし、お互いフィードバックしていけばよろしいと思う。

 さて、肝心のゲームシステムだが、カプコン対戦格闘には珍しく4ボタンになっており、その内訳はアタック1,アタック2,ウェポン,ブーストとなっている。
 注目すべきはブーストボタンで、地上でのダッシュは勿論、空中での機動を制御し、トリッキーな攻めを可能にしている。ブースト能力は機体毎に違ったものが存在していて、使い所も異なっている。このブーストボタンのおかげで通常攻撃ボタンが2つであるにもかかわらず、実にバリエーション豊かな攻撃を繰り出せるようになっている。特殊移動のためのボタンをこれだけ上手く使ったゲームは他に無い。

 ウェポンボタンはボタン一つで飛び道具が出せるもので、これも個性的な物が取り揃えてあり、戦いの幅を広げてくれる。特に設置型のウェポンは、私ならばコンピュータの思考ルーチンを作るのが面倒で、採用したく無い攻撃方法だ。実際ボッツのコンピュータも設置型武器に対して、ときどきアホな行動をするのは御愛嬌(笑)
 A1,A1,A2がコンピネーションとなっていて、これを知っていると知らないのでは、面白さに相当違いが出るのだが、マニュアルに書いて無いのはいただけない。
 各機体のバランスは、サイバーEXを食らわせた後投げが決まる機体があったりして、もう一つ取れていないが、勢い優先と言う感じである。
 数少ない前作から受け継がれたシステムのギガクラッシュは、パワーゲージ溜と同じA1+A2ボタンで出るが、これはA2+Wあたりにしてほしかった、ちょくちょく暴発する。

 全体のHPの他に腕のダメージゲージが別にあり、ダメージが累積すると腕が外れて、攻撃力が落ちる。
 腕攻撃専用の技も存在し、攻撃の幅を広げることに成功している。SNKの侍スピリッツの武器落としと同じアイディアではあるが、ロボットの腕が落ちるだけに、かなり違ったものに見えるのが面白いところ。

 人型でないものも多いため、立ちとしゃがみの区別がつきにくいというのは、結構重要な難点ではある。
 またマシン好きな人以外には、これだけ個性的にもかかわらず、機体の区別がつかないという難点があったりする。ここでもキャラと機体を分離したのは失敗だったなぁと思う。

 これだけ良いゲームがヒットしなかったのは、幾つか理由がある。当たりにくいロボットSFものと言うこともあるとは思うが、それは重要な問題点では無い。
 同時期にカプコンから「ヴァンパイアハンター」や「ストリートファイターZERO」が出てしまったため、同じアーケード基盤(CPII)を使用するサイバーボッツはハンターに入れ替えられ、結果、仲間のはずのハンターのための生け贄になってしまった。許すまじレイレイ。
 また機体の数が多くシステムの自由度が高く複雑。つまり(格闘ものとしては)一作目にもかかわらず、ニ作目のボリュームを持ってしまったことが問題点であったという、なんとも皮肉なことがある。

 このゲームはサターンマガジンの熱心な展開もあって、移植の運びとなったもので、ファンのために超限定版という冊子がついているバージョンもある。余裕があるなら買っても良いが、どうせなら攻略本や設定資料集を買った方がいいだろう。
 移植にあたって、ストーリーに声が追加されていて、このキャストがじつに見事で、涙が出そうである(ちなみにCDドラマとは全然キャストが違う、個人的にはサターン版のキャストの方が良いと思う)
 また、ボスキャラであったパイロットとその乗機が使えるようになっている他、アーケードでは噂だけで実際は登場しなかった零豪鬼という機体が追加されている(それぞれ、CPU4レベル以上でクリアし続ければ登場)。零豪鬼はレンダリングCGで作られているため、ドット打ちで作られている他のロボットとは大いに違和感があるが、おまけなので、そう目くじらをたてることも無いだろう。

 そこで結論。

「ロボットもののみならず、格闘ものの大傑作」


1999-10-01